身近な方を亡くされたあなたへ

 

相続手続きは山登りと同じように、あらかじめ進むべきルートが決まっています。

 

それを知らずに、やみくもに相続手続きを始めると、途中で道に迷ったりムダに体力を消耗したり、最悪の場合、相続手続きが期日までに終わらない可能性があります。

 

しかし相続山には、やるべき事やるべき順番が漏れなく示されているので、このルートにしたがって進めば、スムーズに相続手続きを終えることができるでしょう。

 

1合目 役所手続き

 


身近な方が亡くなったときに最初に行うのが、相続山1合目の役所手続きです。


死亡届の提出火葬許可の申請年金の受給停止などを決められた期限内に行ないます。


後々の手続きで必要となる戸籍謄本住民票印鑑登録証明書などもこの役所手続きでまとめて取得しておくと二度手間にならずに済むでしょう。

 

2合目 相続人の決定

 


1合目で取得した書類に基づいて、誰が遺産を引き継ぐ権利を持っているか、つまり相続人が誰かを決めます。


誰も彼も相続人になれるわけではなく、法律で定められたルールに則り、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを調べて相続人を決定します。

 

3~4合目 遺産探し

 

 

2合目で相続人が決定したら、次は亡くなった方の遺産を探します


生前から家族が故人の財産を管理していれば問題ないですが、そうでない場合には、どこにどんな遺産があるか調べる必要があります。


探すべき遺産は預金株式生命保険不動産などのプラスの遺産のほかに、借金もマイナスの遺産として探す必要があるため、効率的な遺産の探し方を知っておく必要があります。

 

5合目 遺産分け

 


3~4合目で遺産探しが終わったら、その遺産を誰が相続するか相続人全員で話し合い、その結果を遺産分割協議書に記載します。


この話し合いで揉めてしまうと、テレビや雑誌でよく目にする遺産争いに発展し、相続手続きが終わらない可能性があります。


「うちは絶対に大丈夫!」そう思い込んでいる家族ほど実は危なく、この5合目は相続山の最難関と言われる難所です。

 

6合目 名義変更

 


5合目で遺産分けの話し合いがまとまり遺産分割協議書を作成したら、それに従って遺産の名義を相続人に変更します。


この名義変更が終わると、相続人は遺産を自分のために使ったり、売却したりすることができるようになります。

 

7~8合目 相続税の申告

 


遺産が一定額以上ある方は、相続税の申告書を作成して税務署に提出する必要があります。


この相続税申告には、死後10ヶ月以内という期限があるため、それまでに7~8合目を突破しないといけません。

 

もし、期限内に登り切れなければペナルティを受ける恐れがあるので要注意です。

 

9合目 税務調査対策

 


相続山の最終関門は9合目の税務調査対策です。わざと遺産を少なく申告したり、申告せず無視したりしていると税務調査が入る可能性があります。


たとえ故意ではなくても、遺産の申告漏れが発覚すれば、税務署から指摘されることもあるため、指摘されやすい項目を事前に押さえておく必要があります。

 

相続山の登り方

 

このように、身近な方が亡くなったあと、残された相続人は相続山を登る必要がありますが、相続山の登り方には大きく分けて2つの方法があります

 

1 相続人だけで登る方法


 

相続山の序盤戦である1合目役所手続き2合目相続人の決定3~4合目遺産探しは、相続人たちだけの力で登って行くことができるでしょう。

 

もちろん、山岳ガイド(専門家)の力を借りると楽に登って行くことができますが、なるべくお金をかけたくない自分たちのことは自分たちで行いたいという方は、自力で登って行くことことをお勧めします。

 

ただし、5合目遺産分け6合目名義変更7~8合目相続税申告9合目税務調査対応は、相続人だけで登るのは難しい場合があります。

 

その場合には、相続山の山岳ガイド(専門家)の力に頼るのも良いでしょう。

 

2 山岳ガイド(専門家)と登る方法


 

相続は、何度も経験するものではないため、多くの方にとって非日常的でそのノウハウもありません。

 

一方、相続山の山岳ガイド(専門家)は、日々相続手続きをサポートしているため、相続山を登る際にとても頼りになる存在です。

 

5合目の山岳ガイドは弁護士


 

5合目の遺産分けで遺産争いに発展してしまったら、それ以上相続山を登ることは出来ません

 

こんなとき頼りになる山岳ガイドは弁護士です。

 

相続山にはさまざまな山岳ガイドがいますが、遺産争いを解決できるのは弁護士だけ

 

もし、相続人同士が揉めてしまい埒が明かない場合には、弁護士を立てて交渉した方がスムーズに進む可能性があります。

 

6合目の山岳ガイドは司法書士


 

6合目では相続した遺産の名義変更を行います。

 

銀行預金の解約は、自分たちでできる場合が多いのですが、不動産の名義変更は多くの書類を集める必要があり、慣れない法務局での手続きが必要なため、山岳ガイドの力を借りた方がスムーズに手続きを終えることができます。

 

また、平日仕事などで忙しい方は、相続人に代わって法務局とやりとりをしてくれる司法書士に不動産の名義変更を頼むといいでしょう。

 

7~8合目の山岳ガイドは税理士


 

遺産の額が多い場合には、相続税の申告が必要となります。

 

毎年の確定申告は自分でやっている方も多いですが、相続税の申告は経験することが少ないため、約9割の方は専門家に依頼をしているようです。

 

相続税の申告を頼める山岳ガイドは、税理士しかいません

 

なかでも、相続税に特化した税理士であれば安心して申告を任せることができるでしょう。

 

山岳ガイド(番外編)

 

すべて専門家に任せたい方


 

相続山を自分たちだけで登る自信がない、相続手続きに時間をかけたくないという方で、お金がいくらかかってもいいから可能な限り任せたい!という場合は、山岳ガイドとして金融機関を選ぶと良いでしょう。

 

金融機関が直接、相続手続きをしてくれるわけではありませんが、その金融機関と取引がある山岳ガイド(弁護士・司法書士・税理士など)を紹介してくれますので、多少お金がかかってもいい場合には、金融機関のワンストップ・サービスを利用するといいでしょう。

 

お金を押えながら極力任せたい方


お金はあまりかけたくないが可能な限り任せたいという場合は、金融機関ではなく、山岳ガイドとして行政書士に頼るといいでしょう。

 

行政書士は、幅広い相続の手続きが可能ということで、金融機関よりも一般的に料金が安いというメリットがあります。

 

遺産争いの解決は弁護士に、不動産の名義変更は司法書士に、相続税の申告は税理士に頼む必要がありますが、それ以外の業務は行政書士に依頼することが可能です。

 

まとめ

 

以上が、相続山(相続手続き)の全体像です。

 

身近な方が亡くなって相続手続きを行う場合には、このルートに従って手続きを進めてください

 

そうすれば、途中で道に迷ったり、ムダに体力を消耗せずに相続手続きを終えることができるでしょう。

 

それでは、1合目から山頂まで一緒に相続山を登って行きましょう。