遺産探しが終わったら、次はいよいよ5合目遺産分けです。
ここでつまずくと、相続手続きをこれ以上進めることができず、立ち往生してしまいます。
まずは遺言書の確認
遺産の分け方を決めるに当たってまず確認が必要なのは、遺言書があるかどうかです。
遺言書がある場合
基本的に、遺言書に記載されている分け方に従って遺産分けを行うため、遺産分けの話し合いは不要になります。
しかし、実際に遺言を書いている方は少なく、10人に1人位の割合ですので、実際は遺言がないケースも多いでしょう。
遺言書がない場合
相続人が全員集まって遺産の分け方を話し合います。
そして、分け方が決まったら遺産分割協議書という書類を作成し、相続人全員が署名と実印を押印して、ようやく遺産分割が終了します。
遺産分けのルール
各相続人には、法律によって遺産を相続できる割合(法定相続分)が決められています。
しかし、必ずしも法定相続分通りに遺産を分ける必要はなく、相続人全員が話し合って自由に分け方を決めることができます。
例えば、相続人が3人いる場合、すべての遺産を1人に相続させることもできます。
しかし、その分け方に対して相続人全員が賛成していることが条件です。もし一人でも反対している人がいる場合、遺産分けは終わりません。
遺産分けで揉めた場合
基本的には、相続人同士の話し合いで何とか意見をまとめたいところですが、それでも互いの主張がぶつかり合ってどうにも埒が明かない場合には、家庭裁判所での調停手続きを利用することができます。
そして、調停でも解決しないときは裁判所に遺産の分け方を決めてもらう審判手続きへと進んでいきます。
しかし、家庭裁判所を利用すると、年単位で時間がかかり、弁護士に依頼した場合には費用もかさみます。
さらに、そこまでしても、家庭裁判所が下す審判は必ずしも相続人の希望に沿うとは限りません。あくまで裁判所の判断であり、相続人が満足しない分け方になることもあるため、やはり相続人同士の話し合いで決める方が良いでしょう。
仲の良い家族でも揉める
今の時代、兄弟姉妹は平等という意識が強くなってきたため、各相続人が法律で認められている権利を主張する傾向にあります。
さらに、今は将来が見通しずらい時代ですので、遺産分けでもらえるお金はもらっておきたい、と思うのはごく自然な考え方と言えます。
しかし、多くの家庭ではうちは仲が良いから遺産分けで揉めるはずがないと考え、遺言書を残すなどの事前の対策が手薄になるため、結果的に遺産争いになってしまうことがあります。
揉めやすいケース
親を介護していた場合
相続人の誰か1人が親を介護していて、親の財産の維持や増加に寄与した場合には、ほかの相続人より多く遺産をもらうことができます(これを寄与分と言います)。
しかし、介護は精神的な負担が大きいにも関わらず、その貢献度をお金に換算するのは難しいため、十分なお金がもらえないとして争いに発展しやすいと言えます。
親から贈与を受けていた場合
特定の相続人だけが、親から結婚費用や留学資金など多額の贈与を受けていた場合、もらっていない相続人から不満の声が上がりやすくなります。
このため、特定の相続人だけが生前に特別の利益を受けていた場合には、相続のときに実際に残されていた相続財産の額と合算したうえで、各相続人の相続分を決めることになります(これを特別受益と言います)。
ただし、何をどこまで特別受益とみなすのか、相続人同士で意見が分かれる場合には、やはり揉めやすいケースと言えます。
同居 vs 別居
親と同居していた相続人は、面倒を見てこなかった別居の相続人に対して少なからず不満があります。
一方、別居していた相続人は、親と同居して生活費が助かっていた相続人に不満があり、しかも親の財産を把握できないせいで不信感を募らせているため、遺産争いに発展する可能性があります。
遺産分けを円満に進める方法
相続人だけで話し合う
最も理想的なのは、相続人だけで遺産分けの話し合いをすることです。
相続人の配偶者が、良かれと思って話し合いに参加するケースがよくありますが、当事者同士なら多少揉めても落ち着くところに落ち着くものが、相続人以外が関与した途端にバランスが崩れてしまうので、できれば避けたほうが良いでしょう。
相続人だけで腹を割って話すほうが、まとまりやすいと言えるでしょう。
複数回話し合う
1回で話し合いをまとめようとせず、複数回に分けて協議を行うのも一つの方法です。
最初は揉めていても回を重ねるうちにお互いに妥協し、まとまるケースもあります。
冷静な気持ちで
相続人全員で集まって協議をしていると、お互い自分の主張に熱中しすぎて、相手の言い分を冷静に聞けなくなってしまいます。
そこでお勧めなのが、実家や相続人の自宅など閉ざされた空間ではなく、喫茶店やファミリーレストランのような場所です。
少し周りの目がある場所で話し合いをすることで、冷静でいることができます。
いきなり専門家に頼らない
相続人同士の仲がそもそも悪く、どうしても顔を合わせたくない場合には手紙のやり取りで遺産分けを進めるのも1つの方法です。
ただ、相手とのやり取りを最初から専門家に丸投げすることはおススメできません。
いきなり知らない弁護士や税理士から遺産分割に関する細かい書面が郵便で送りつけられたら、嫌な気分になる場合があります。
専門家に限らず、相続人以外の第三者が下手に介入してくると、話し合いがこじれてしまう恐れがあるので、まずは相続人自身が手紙や電話などで糸口を作るようにしましょう。
専門家に頼るのは、相続人同士で話が前に進まない場合に取っておけばいいのです。
遺産分割協議書の作成
遺産をどのように分けるか、話し合いが無事にまとまったら、それを基に遺産分割協議書を作ります。
このあと、相続山6合目で遺産の名義を変更するときや、7~8合目で相続税の申告の際に税務署から提出を求められるので、遺言書がない場合には必ず作成します。
遺産分割協議書を作成しておけば、誰が、どの財産を、どれだけ相続するか、それらが明確になるので、勘違いだった、そんなつもりじゃなかったなど後々起きそうなトラブルの回避にも役立ちます。
遺産分割協議書に書く内容としては、預金の場合は金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号。不動産だと登記簿の記載通りに所在地番などを正確に書いていきます。
書き漏らしや新たな財産が見つかった場合に備えて、遺産分割協議書の最後に上記に記載以外の財産があるときは相続人〇〇がこれを相続するという文言を入れておくと良いでしょう。
遺産分割協議書が作成出来たら、相続山最難関の5合目は終了です。
お疲れさまでした。
ここまでくればあと少し。
次の6合目で名義変更を行えば、故人の遺産を相続人の財産に替えることが出来ます。
あともう少しだけがんばりましょう。